イタリア自動車見聞録2002(2)

 

●フィアットスティーロ

 今回もレンタカーを借りました。 あらかじめ日本で予約をしていけば安心なのですが、どのメーカーになるか分からないと言われたので、現地で前日に予約をすることにしました。 ところが営業所に行ってみると、予約する限りはメーカー指定はできないと言われ、イタリア車じゃなかったらどうしようと、かなり不安でした。 しかしめでたくイタリア車を借りることができました。 今回はアウトストラーダを長距離走るので、中型車にしました。 最新のフィアットスティーロで、エンジンはもちろんディーゼルです。

 イタリア車を借りられたのはよかったのですが、このスティーロは見た目があまりよろしくありません。 写真より実車の方がはるかに魅力的なデザインが多い中、スティーロはその逆でした。 決して悪いデザインではないのですが、あえてデザインで選ぶ車ではありません。 ヌオーバプントくらいのインパクトが欲しいところです。 カタログはプントと同じようにポップに作ってあるのに、実車から受ける印象はイタリアらしさが希薄です。

 最近のイタリア車はグローバル化が進んできて、スティーロにもいろいろな電気仕掛けがあります。 いつ頃のイタリア車から装備されたのかは知りませんが、スピードを出し過ぎると、日本車のように警告が出ます。(これを電気仕掛けとは言えませんが・・・) 140km/hになると(イタリアは最高130km/h制限です)、1回だけピーと鳴って、スピードメーターのところにある液晶パネルに「Velocita」と表示されます。 昔のアルファロメオにはよくヴェローチェという名称がついていましたし、現在のGTVのVはこの意味だと思います。 要するに「速い」という意味なのですが、ヴェローチェという言葉に馴染みのある方はかなり笑えると思います。 日本に輸入されている147などはどうなっているのでしょうか。

 ハンドリングはいたって普通です。 ワインディングを飛ばしてもそれほどおもしろくもありませんでしたが、一時のフィアットよりはロール量がしっかり取られていて好感が持てました。 石畳を走っても乗り心地は良かったです。 高速はさすがにしっかりしていて、160km/h巡航は車としてはまだまだ余裕の範囲です。 180km/h巡航になってくるとシャシー性能より、加速や減速でのもたつきの方が気になりました。

 1週間の間、街中、山道、高速と乗りましたが、いたってまじめな普通の車に感じられました。 足回りのセッティングなどではまだイタリア色はあるのでしょうが、ますますVWゴルフになろうとしているような気がします。 ちなみに未舗装路も随分走りましたが、最低地上高が低いためにちょっとした轍で底をすりました。 エンジンの下にカバーがしてあり、それがこすれているだけなので特に問題は無いようです。

 インテリアは、10年前と比べれば全てがグレードアップしており、、まさに隔世の感ありです。 プラスチックの感触、ボタンの操作感などなど。 すぐに蓋がとれるなんていうことはありません。 昔と変わらないのは色使いだけでしょうか。 少し前のイタリア車は、室内長をかせぐために、乗員は足をかなり曲げて座る姿勢で、ダッシュボードの奥行きはかなり短かったのですが、それが日本車などと同じようになってました。 この辺りは昔の方が好きだっただけにちょっと残念でした。
 細かい点ですが、なぜか椅子の座面の奥行きがありすぎて、きっちりと座ると膝の裏が座面の端に当たってしまいます。 特にこのサイズにするメリットも分かりませんでした。 

 

●アウトストラーダ

 フィアットスティーロで走った距離は1000km以上になりましたが、そのうちアウトストラーダを700kmくらい走りました。 
交通量の少ない3車線などでは、これぞアウトストラーダというのを堪能しました。 右車線(走行車線)をY、プントなどの小型車が最高140km/hくらい、まん中車線をスティーロ、156、リブラなどの中型車が160km/h、一番左車線はそれより速い車という図式が決まっています。 もちろんトラックやバスが増えてくるとスピードは落ちます。 156やリブラ、166などはディーゼルでもスティーロよりパワーがあるのか、160km/h以上でも余裕で追い抜いていきました。

 

 すごいのはポルシェや一部の速いBMW、ベンツで、200km/hオーバーで抜いていきます。 こちらが他車を追い越そうとして追い越し車線を170km/hくらいで走っていると、それらの車はいつの間にか真後ろにピタリとついて左右に車を振って「のけのけ」と言ってきます。 バックミラーを見たときの距離とスピードの感覚が日本とはまったく違うので、最初は慣れるのに大変でした。 このようなことができるのはドイツ車だけで、イタリア車は性能的にまだまだです。 もちろんフェラーリなどならば同じようなことはできるでしょうが、一般に乗られている車ではありません。
 ちょっと話は逸れますが、イタリアでは高性能ドイツ車とフェラーリではとらえ方が違うようです。 確かなことは言えませんが、前者は優れた道具としての車、後者は土地などと同じ財産に近い感覚のようです。 日本ではポルシェやフェラーリ、あるいはGTRなどを比較しますが、イタリアの人々は同列で比べるものではないと思っているようです。 つまり高性能ドイツ車でスピードを出すというのは時間を買っているということであり、フェラーリでスピードを出すというのはフェラーリ自身を味わっているということだと言えるでしょう。

 主要都市間を移動する場合、自動車と電車を比較すると、車の方がリーズナブルに早く到着します。 リーズナブルな理由のひとつは、ガソリン代は日本と同じくらいなのですが、高速代がはるかに安いからです。 本来自動車は自分で運転するのですから、日本のように電車の方が安くて早いのではなく、イタリアの方が本来の姿のように思います。

 アウトストラーダで一番楽しかったのは、なんといってもワインディングです。 高速道路でワインディング?ですが、場所によっては日本では考えられないような曲率のカーブが延々と続くのです。 最初見たときは「えっ、ここは高速じゃなかったの?」とかなりびっくりしました。 更にびっくりするのは、ここを皆これまた日本では信じられないような走り方をするのです。 2車線あるにも関わらずそれをまったく無視して、端から端までフルに使って走ります。 俗に言うアウトインアウトで、みんな1列になって駆け抜けていきます。 そこでも速い車は遅い車を容赦なく抜くので、風景はさながらサーキットです。 私も存分にバトルをさせていただきました。 ここを走っていれば、市販車で走る限りわざわざサーキット走行に行かなくても充分楽しめます。


●番外編 : アウトストラーダのサービスエリア

 サービスエリアでは、これも日本では考えられないことですが、車が走っているところからガードレールを隔てたすぐ横まで普通に行けます。 スピードが速いので、聞こえてくる風切り音は相当すごいものがあります。
 大きなサービスエリアでは、スーパーマーケットと同じ規模くらいの売店があり、そこを見ているだけでも楽しいです。

 


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